輪島インスパイア・ベース(石川県輪島市)
2024年元旦の能登地震発生直後、輪島市の東部・門前町で地元漁師である田谷が中心となり、被災した住民に対して衣食住その他あらゆるサポートを行うボランティア拠点「輪島インスパイア・ベース」(以下I.B)が誕生しました。
「行政の後になったことは一度も無い」
代表の田谷は、発災直後の1月4日には仲間達と井戸を掘り、地域の生活用水として開放。断水が長く続いた為多くの住民がこの井戸に救われました。そして飲料水、食料、衣服、生活用品などの物資を全国から集めてI.Bで配布したり、避難所や住民宅に一軒一軒に定期的に配り回りました。


また、田谷は東日本大震災時に支援活動にもたずさわった経験から、「能登で役に立てることは無いか?」とボランティアが全国から田谷のもとに集まりました。そのボランティア達の宿泊スペースを作り、まかないを振る舞うなど寝食をサポート。地域の困りごとの情報を集めて人材を向かわせるなど、エリア全体の復旧・復興に貢献してきました(その後、民間のボランティア団体「RQ」も合流し、情報・活動を共にし奥能登ではトップのボランティア派遣数になった)。そして、同年9月の豪雨でも甚大な被害に見舞われた門前町。田谷はこれまでの活動を振り返り「住民の求めることに迅速に動いてきただけだが、振り返れば、行政の後になったことは一度も無い」と語ります。



「震災復旧」から次のフェーズへ
震災から1年9ヶ月経った今(2025年9月現在)、被災者の生活は、仮設住宅における問題(買い物の困難さ、孤立、狭い空間での暮らし、次の住まいの準備など)、生活困窮者のサポート、子供がのびのび遊びべる場所が無くなってしまっていることなど、「次のフェーズ」の問題を抱えています。
I.Bは、震災当初から住民が立ち寄って話をする憩いの場としても運営しており、また、遊び場をなくした子供達を自由に遊ばせるイベント「I.B BonBorn」などを開催しています。プール遊びやピザ釜でのピザ作り、施設内の大きな木に作ったすべり台遊びができたりと、今では同町以外の子供達も集まり、いつも多くのお子さんと親御さんが参加されています。


もちろん、これらの活動には当然ながら費用が発生していますが、応援者の寄付のほか、田谷の自費でまかなわれています。
能登から撤退するボランティア団体の実情
今、能登で活動している民間のボランティア団体の多くは、運営費の問題に直面し能登からの撤退を検討せざるを得なくなっています。震災当初は寄付などが集まりやすいですが、時間の経過と共に世間の関心も薄くなり忘れられていきます。もちろん地域のニーズを鑑みて役割を終えたボランティア団体もあると思いますが、多くは苦しい事情があります。I.Bは住民からは「ここがあることで安心できる」「何かあれば相談できる誰かがいる」「子どもを安心して遊ばせたい」と存続を求められています。
運営費捻出に自然を活かす 〜流木プロジェクト〜
海岸を豊富に有する門前町は、隆起して現れた広大な白い砂浜が新たな景観になっていますが、その浜に多くの流木が打ち上げられています。流木は自然が長い時間をかけて作った一点ものの姿・形。人工的に作れない美しさがあり、装飾からアートまで幅広く愛用されています。


I.Bでは打ち上げられた流木を商品として流通できるように処理をして販売し、運営費を捻出しようというプロジェクトを立ち上げました。このプロジェクトがスタートするきっかけはボランティアに参加していたメンバーからのアイディアでした。そのメンバーはフェアトレード事業を展開する第3世界ショップの元スタッフだったこともあり、そこから、グループ会社の東京都の大田市場で花屋向けの資材を扱う卸業者、株式会社ホワイエ様を紹介して頂きました。そして「流木はお店のディスプレイなどでよく使われる資材。毎年2月・9月に参加している東京ビッグサイトの「東京インターナショナルギフト・ショー」に展示・販売してみませんか?」とご提案いただきました。実際に輪島の流木をたくさんのお客様が手に取ってもらえる「絶好のチャンス」。ありがたく受けさせてもらいました。
スタートするにあったって、ホワイエ様から商品としての留意点・アドバイスを頂きました。
商品として流通させるにはまず汚れを落とす必要があるため多くの水を要しますが発災直後に整備した井戸水を活用します。流木の表面の汚れを一本一本に高圧洗浄機で洗い流します。

その後、簡易プールに3日間水を流しながら漬け込み、さらに表面汚れや流木内部の塩分や汚れを落としていきます。その後、夏場の天日干しによる乾燥を行います(雨がふる時はシートで保護します)。
東京ビッグサイト「ギフト・ショー秋2025」で流木をお披露目
2025年9月の「ギフト・ショー」への展示に間に合わせるために、少なくとも8月下旬には東京都大田市場内にあるホワイエ様の店舗に納品する必要があります。流木は物によっては大型で形にまとまりが無い「一点もの」なので、配送方法・費用がネックでした。配送業者なども検討しましたが、今回は、以前からボランティアに参加していた、能登・宝達志水町のゲストハウス「ちりん」さんが所有の軽バンで運び、高速代・ガソリン代はホワイエ様が負担、最小限の費用で納品することができました。


当日、能登の流木としてホワイエ様のブースに展示・販売されました。どのような反応が得られるか、または、全く得られないのか?不安と期待が入り混じる状況でしたが、蓋をあけてみれば多くの反応が得られ合計14本が注文につながりました。様々な大きさや形の流木を納品しましたが、長くて形が複雑なものや、大きな切り株など、ある種「変わった」造形の物に興味が集まったようでした。


次回2026年2月のギフトショーにも流木を取り扱っていただけることが決定しています。今回の反応から見えた改善点をフィードバックしてもらい、次回に繋げていきます。そして新たなアイディアとして出た流木を使った雑貨作りも思案中です。

次回2026年2月のギフトショーにも流木を取り扱っていただけることが決定しています。今回の反応から見えた改善点をフィードバックしてもらい、次回に繋げていきます。そして新たなアイディアとして出た流木を使った雑貨作りも思案中です。
「災害支援ボランティア」から「自立支援ボランティア」へ
今はまだ試行錯誤、発展途上の段階ですが、能登の自然を活かして自立を目指し「必要とされる地域ボランティアの持続」に挑戦しています。震災から約1年半、世間的な関心は薄れ、寄付や助成金なども得られにくくなっています。しかし、まだ復旧の手がつかず、被害を受けたその時のままの風景を目にすることもあります。そして仮設住宅に身を寄せる被災者の生活の立て直しもこれからです。これからのI.Bは、災害ボランティアを受け入れる拠点から、この地域の住民が災害から立ち直り、仕事を創り出して自立的な生活をするための拠点へと発展させたいと考えています。



